巨匠、ハインラインの代表作である「月は無慈悲な夜の女王」は、流刑地化してしばらくたった月世界を舞台にしたSF小説。
自意識を持って人間の言葉を操る「マイク」のメンテをするコンピュータ技術者「マニー」が主人公。その修理の仕方がユニークで、マニーはマイクと会話することでマイクを直してしまう。もちろん、紙にパンチしたプログラムをマイクに読ませてプログラミングすることもできるが、話したくて仕方がないのに「馬鹿でなし」がやってこないことを嘆いているマイクには「人間らしく」話しかけてあげることが一番の薬になるのだ。
ストーリー回しもよい。はじめはテンポの良い展開で、読者は月世界の一員になってしまう。途中はゆったりと丁寧に書かれ、これで「革命」が起こるのだろうか、と思いながとにかく流されていく。ある転機を境に急流に巻き込まれ、そのまま一気に最後まで進んでいく。
途中途中で、本書はマニーの回想であることが示されるので、「ああ、おそらくハッピーエンドなんだろうな」と思いながら読んだ。だから面白いが、焦らなくてよいので良い。
さて、1966年に雑誌に連載されていたということなので、約半世紀前の小説ということになる。もちろん、私は生まれていないので、その頃の世界については、歴史的な出来事しか知らない。1966年というと、「ALPACレポート」が書かれた年で、機械翻訳に悲観的な判断がなされた年であった。そんな時に「饒舌な」マイクが現れたのは、ちょうど時代の盛り上がりの頂点だったのだろうか。
以下、抜粋。自分用のハイライト
P. 2
「ドクター・ワトソンがIBMを創立する前に書いた小説にちなんで、おれはこの計算機にマイクロフト・ホームズというあだ名を付けたのだ。この小説の主人公のすることといえば、ただすわって考えることだけだーそしてそれこそマイクのすることだ。」
へー、読んでみたい。
P.263
「わしたちは命をかけて入るが、そのことがわかるほどの年齢になっている。そのことについて、死ということを感情的につかめるようになっているべきだよ。子供というものは死が自分のところへやってくるのだということを、なかなかつかめないものなんだ。成人とは、人間が必ず死ななければいけないことを知り……そしてその宣告をうろたえることなく受け入れられる年齢だと定義してもいいぐらいなんだよ」
ふうむ。
ハインラインだと、「夏への扉
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