2019年10月31日木曜日

読書記録 星を継ぐもの



ホーガンの名作SF星を継ぐものを読んだ.会社で「三体」が紹介されたときに関連作品として話題に上がったので,読んでみた.

人類が木星にまで進出した未来のこと.月面で宇宙服を着た死体が見つかり,分析の結果,5万年前のものだということがわかる.この死体の正体が何かを物理学者のハント博士が調査を始めるところから物語は始まる.事実から仮説を立て,仮説を検証するうちに説明のつかない謎が現れ,そうこうしているとまた新しい事実が判明して仮説をアップデートして,というプロセスを繰り返す.(うまくいっている)研究のプロセスを追体験できてとても楽しい.

最後までとても楽しめた.続編の「ガニメデの優しい巨人」も読みたい.

ただ,読み終わってから?となった.もしかしたら前に読んだことがあるかも.妻に聞いてみたら,その表紙は見たことがあると言っていたのでたぶん読んでいる.おそらく大学生のころだと思う.

すべてを忘れてしまって,二度目も存分に楽しめたのでお得だったと思うことにした.

2019年10月29日火曜日

読書記録 今すぐ「それ」をやめなさい



森田豊著 今すぐ「それ」をやめなさいを読んだ.
著者は医師で,健康のためにやめた方が良い習慣を1つ約4ページで50個紹介している.

テーマは食事,アルコール,入浴・睡眠,身だしなみ,心と脳の健康,足腰,社会生活の7つあった.

取り入れたいと思ったのは,下記の3点.

  1. お風呂で湯船に入ってから体を洗うのをやめる
  2. カロリー消費を運動に頼るのはやめる
  3. 2時間以上座りっぱなしをやめる
一点目については,湯船につかると,皮膚表面がふやけて傷つきやすくなり,その状態で体を洗うと皮膚が荒れて乾燥肌が悪化する,ということらしい.これは経験的にもそうなので,今後も先に体を洗ってから湯船につかるようにしたい.

二点目は,普通の生活をしている人は,運動で消費されるカロリーはたかだか5%(そもそも時間が取れないからでしょうな).で,約30%は,非運動性熱生産(ニート)で,通勤で歩いたり,家事をしたりして体を動かすときに消費されるらしい.基礎代謝が60%なので,その半分にあたる.基礎代謝は30代男性なら1500kcal程度らしい(参照).その半分は700kcalくらい.結構大きい.水泳ならクロールで1時間半くらい泳がないといけない.クロール3時間は厳しいが,ちょこちょこ体を動かすのを2倍にするのは可能なのではないか.日常生活のちょっとした活動を増やしていきたい.

三点目は,2時間以上座っているとがんのリスクが大腸がんだと8%上がるらしい.ニートが阻害されて,免疫機能が衰えるからだ,と推測されている.なので,そういう面でもちょくちょく席を立って歩き回るようにしたい.

このほか,そうだろうなと思ったのは下記2点.一見体に良さそうだけど,効果がない or 逆効果.
  1. デトックスで体はきれいにならない
  2. 運動前の入念なストレッチはやめる

そして,これはちょっと議論がありそうと思ったのは下記2点.
  1. 少量のお酒は認知症予防によいが,大量はだめ
  2. 食後すぐの歯磨きはしない
お酒については統計のとり方があれで,お酒を飲まない人のグループに病気で飲めない人が含まれていて,悪い方向にバイアスがかかっていた,という話が最近出ていたように記憶している.つまり,少量でも飲むと有害だ,と.今年読んだはずだが,その本を日記に書いてなかったのが残念.

食後すぐの歯磨きについては,食事で生じた酸が歯の表面を傷つけやすくなるから,というのが理由だが「酸性の食品をとった直後は避けるだけでよい」などいろいろ議論があるみたいですね.

健康に関する「定説」は結構移り変わるので気をつけてアップデートしていかなければと思った.

2019年10月28日月曜日

読書記録 アメリカの高校生が読んでいる投資の教科書



アメリカでは高校生に経済や金融の実践的な教育が行われているが,日本ではまだそこまでではない.本書は,日本の高校生に投資の基本を教えるとしたら,という過程で書かれている投資の教科書だ.

株式,債権,為替について一通り説明してある.複利の効果で72のルールなど実践的な内容もある.知っている内容が多かったが,良い復習になった.

ただ,2010年の発行なので,2019年現在では例に挙げられている数値が古くちょっとピンとこないものもある.今はもうマイナス金利だったりするしね.

2019年10月11日金曜日

読書記録 夜型人間のための知的生産術



齋藤孝著 夜型人間のための知的生産術を読んだ.
齋藤先生も夜型らしい.内容は,これまで読んできた齋藤先生の本にあるように,

  • とにかくたくさん本を読む
  • アウトプットもする.それも人が唸るようなものを書こうと努力する
  • 呼吸を整えて,肝の据わった人になる
というような,いつもの自分を磨く方法が書かれている.本書の特徴は,それらの方法や効果を説明するのではなく,それをする時間に注目している点だ(なので,方法は他の本を読んで補うべき).先生の体質と体験から夜にする場合に焦点が当てられ,先生の経験と夜型の偉人たちの逸話をもとに説明されている.

世間では朝型がもてはやされているので,その逆張りでもある.
昔から早起きは三文の徳,と言うし,最近では,ティム・クックの起床は3時45分という話もある.

しかし,近年の研究で,朝型か夜型かは遺伝子が大きく関わっていて,体質なので変えようとしても仕方がないらしい,ということがわかってきた.

そうすると,朝型は朝型なりに,夜型は夜型なりに,それぞれ特徴を活かしながら頑張っていくしかない.

本書を読めば,夜型の人は自分にあった鍛錬の方法が見つかるかもしれないし,朝型の人は夜型の人はそう考えるのか,とかそんな努力をしているのか,などと夜型の人への理解が深まるかもしれない.

ただ,本書には今まで読んできた齋藤本と比べて,主張にやや歯切れの悪さを感じた.それは, 世間には夜型でない人もいて,それでも成功している人がいるためではないか.

例を挙げるとすると,夜に創造性を発揮した作家としてバルザックを上げている.夜,書いて,朝,校正するタイプだったらしい.でも,作家こそ,いろいろなタイプがいる.例えば村上春樹は午前中にしか仕事をしないという.そうすると,夜じゃないと創造性が高まらないわけではないよね...と思ってしまうのだ.

夜とか朝とかにこだわらず,それぞれがそれぞれのゴールデンタイムを持っているはずなので,成し遂げたいことを常に頭の片隅において,どの時間に何をするといいのか,考えなさい,というのが,この本から学ぶべきことなように思う.


2019年10月10日木曜日

読書記録 ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ




グレン・アーノルド著 ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだを読んだ.

ウォーレン・バフェットは伝説の投資家で,世界最大の投資持株会社バークシャー・ハサウェイの経営者.オハマの賢人とも呼ばれている.

そのバフェットが,(ほぼ)無一文からどのようにして最初の1億ドルを稼いだかが,本書では述べられている(ことになっている).実際に読んでみると,それぞれの投資で得られた利益が開示されていない場合もあり,結局どの時点で1億ドルに達したのかよくわからなかった.

本書の良いところは,そういうアオリのための見せかけの数字にとらわれず,バフェットが当時置かれていた状況と,どんな判断によって投資するに至ったのかが,それぞれのケースで丁寧に書かれていることだ.

それによると,大学時代に師事したバリュー投資の創始者ベンジャミン・グレアムの教えに心酔し,会社の価値を詳細に分析し,Mr.マーケットの気まぐれに騙されず,逆に利用した,というのがバフェットの根底にあるプリンシプルのようだ.

かといって,それだけで投資がうまくいく,というものでもなくて,バフェットはかなり経験から学んでいる.

例えば,子供の頃(なんと11歳)に姉と共同で資金を出し合い,ある会社の株を購入した.しかし,目論見ははずれて株価は下落.資金を出してくれた姉に面目が立たず,罪悪感を抱えて苦しい日々を送った.しばらくして価格を戻すとすぐに売却.この投資の利益は約5ドル.この経験からバフェットは出資者のお金を運用する責任感を学んだという.

その他にも,バフェットがフロートに目をつけたこと,投資をするだけでなく,経営にも関わったこと,など勉強になった.

フロートは,ブルーチップスタンプのようなスタンプを集めて商品を貰おう式のビジネスや保険のようなビジネスで発生する.顧客から先にお金を受け取って,支払いは後であるため,当面支払うあてのない余剰資金がでて,それをフロートという.フロートを投資に回せば,ある意味自分のお金ではなく,顧客のお金で利益を出すことができる.頭良いけど,損失をだしたら,と思うと怖い.片手間にできるようなものではない.
今だと,Suicaやバーコード決済のチャージ方式のものでも同様にフロートがありそう.規制は厳しくなってそうだけど.

また,バフェットの出資会社への経営への関与については,これは人間力がすごかった.まず,信頼をおいて経営を任せられる人を見つける.そして,基本的に経営はその人に任せるのだが,もしその経営者から相談があれば,時間を割いて親身に対応する.なるほどなぁ,と思うものの,実際やろうとしたら難しい.まず「バフェットに相談すればなんとかなる」と頼りに思ってもらわないといけない.舐められたら終わりだ.バフェットはそんな経営者を複数相手しなければならない.「ちょっと忙しいから」が続けば人心は離れるだろう.やっぱり,人なんですね.

そんな賢人も,バークシャー・ハサウェイの買収の件では怒りに我を忘れたような取引をしていて興味深かった.信頼を重視し,裏切りを許せなかったんですね.

ということで,ためになったことはためになったのだが,この浅い感想を見ればわかるように,バフェットが下した経営判断の具体的な凄みなどについてはイマイチ腹落ちしていない.経営や株に関する知識が足りなすぎるのだ.

もうちょっと経済を学んでから読み返したい本である.

2019年10月9日水曜日

読書記録 父親が知らないとマズイ 「女の子」の育て方



高橋博著 父親が知らないとマズイ 「女の子」の育て方を読んだ.
一言で言うと,親の考えを子どもに押し付けるな,対話せよ,とのこと.
人生の先輩として,自分の経験を話してあげるのはいいけど,古いものさしで子どもを測るな,縛るな,と.

主張はもっともなんだけど,補強材料が頭で考えた感があったり,ステレオタイプじゃない?と思う面があったりして,やや弱い.著者はいろいろな学校で学校改革,教育改革をされてきた,ということなので,もっと具体的な事例があるとよかった.または,統計をつかったり,研究を引いたりするとか.

どちらかというと,女の子,うんぬんのところよりも,今の中学,高校がどうなっているか,のところが勉強になった.東京都の公立高校の定員数って,全生徒の4割しかないんですね.私立がマジョリティという.地方の公立高校出身としてはショックを受けた.

私立といっても,金銭面では公立と大きな差はないらしい.教育の無償化で補助金がでるためだ.所得制限はあるけれども.こういう制度(文科省)ですね.

とはいえ,私立は授業料だけでなく寄付(強制)とか,修学旅行積立金とか,いろいろと追加でお金がかかりそう.

また,私立だと学校間で教育方針やカリキュラム面での違いが大きいとのこと.特に考えることを重視した,新学習指導要領ではその違いがでる,と.

うーむ,これはちゃんと準備しなければ......

2019年10月8日火曜日

読書記録 人生で大切なことは泥酔に学んだ



栗下直也著 人生で大切なことは泥酔に学んだを読んだ.

太宰治,三船敏郎,福沢諭吉など著名人の泥酔にまつわるエピソードを紹介する.あの有名人が実はこんな酒乱だったなんて……と絶句するような話が満載である.

人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった」とか,「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」など,いろいろ「大切なことは系」の本はあるが,本書の面白さはそれらとは一線を画す.

まさか名作「走れメロス」の誕生に,泥酔が深く関わっていたなんて……

著者はまえがきで下記のように述べている.
彼らはしくじりながらも,それなりに成功を収めた。
(中略)
「酒を呑んで泥酔しても胸を張れ」とは言わないが,くよくよ悩んでいても仕方がないではないか。令和を生きる社会人が反省しながらも,明日を元気よく生きる処方箋に本書をしてほしい。
しかし,どのエピソードもぶっ飛びすぎていて処方箋になど,とてもならない.どんなに酔っ払っても,軍艦から大砲をぶっ放したりしないでしょう?

また,有名人のエピソードを引き立てるのが著者自身の泥酔エピソードである.著者は1980年生まれとあるので同世代であり,中にはああ,これは,と親近感を覚え,後悔を呼び起こすエピソードもある.さすがに著者のように千葉ー神奈川間を往復したことはなかったが,京王井の頭線を数往復したことはある.富士見ヶ丘駅で車庫行きになり,そこから三鷹台駅まで歩いたんだよな……

私の話はどうでもよかった.本書に戻る.
読んでいて気がついたのは,あるエピソードで主人公だった人物が,別のエピソードにも登場することだ.例えば「汚れちまった悲しみに」で有名な中原中也は,ビール瓶のエピソードで日馬富士事件を絡めて暴力的なエピソードで登場する.30歳と若くしてなくなり,繊細なイメージを持っていただけに意外であった.その中原は,太宰のエピソードにもマジで怖いので絶対に酒場で会いたくない人物として登場する.
また,評論家の小林秀雄は自身駅のプラットホームから落っこちるエピソードで登場するが,その小林は中原のエピソードにも登場する.なんと同じ女性を取り合った間柄であったという.泥酔は泥酔を呼ぶのか……

本書で登場するのは教科書で見るような確立された,堅いイメージしかなかった人々なのだが,本書を読んだ後にはホントしょうがないやつらだ,というイメージに変わる.なので,酒を飲めない学生さんも,読んでおくと心理的な障壁を破壊できて良いかもしれない.

あと,個人的に「白壁王」とか「大伴旅人」が出てきたのもよかった.令和にちなんで「大伴家持」を読んだときに出てきた人たちだ.1000年前も,100年前も,今も,人間あまり変わらないな,と思った.

今年ぶっちぎりNO1に面白かった.
こういう本があるから読書はやめられない.

著者の書評リストを見つけた.どれも面白そう.次の一冊をここから選ぶのもよいかもしれない.

2019年10月7日月曜日

読書記録 ココまで変わった学校の教科書



コンデックス情報研究所編著 いつのまに?! ココまで変わった学校の教科書 昭和〜平成〜令和で驚くほど書き換えられていた を読んだ.

表紙にあるように

  • 仁徳天皇陵古墳は今は大仙陵古墳と呼ぶ
  • My name is Ichiro Suzuki. ではなく I am Suzuki Ichiro.
  • 恐竜は絶滅ではなくその一部が鳥類に進化した
というような教科書変わったよ,ということを1件2,3ページのペースで紹介してくれる.
科学における新発見(恐竜と鳥),歴史上の発見や解釈の変化(仁徳天皇陵),文化の変遷や異文化の尊重(英語でも名前は姓名の順)によって教科書は今も変わり続けている.子どもと話すときに,正誤表(誤りではないんだけど)みたいに利用できて良さそう.



しかし,読んでいて疑問も残る.鳥と恐竜では足の指の付き方が違うので,(羽毛があったとしても)恐竜は鳥の祖先ではない,という主張を2000年頃に見たような気がするんだけど,あれはどうなったのか.

また,個人的には,日本最古の貨幣は和同開珎ではなく富本銭というのに地味にショックを受けた.Wikipediaをみると,確実に広く流通した最初の貨幣は和同開珎となっていた.新しいことがわかると条件がどんどんついていく.テストではどっちが出るのだろうか.

すでに有名な変更もカバーされていて,鎌倉幕府は1192ではなくて1185とか,冥王星は惑星ではなくなった,というのも紹介されている.一応ニュースで知っていたのだけれど,本書では理由もわかりやすく説明してくれているので,読み物として楽しめる.

ちなみに鎌倉幕府の成立年が変わったのは,征夷大将軍に任命された年(1192)を起点とするのではなくて,守護地頭を全国においた年(1185)を起点とするようになったから.冥王星が惑星でなくなったのは,観測技術の向上によって同じくらいの大きさの天体が見つかったことがきっかけ.惑星の定義が見直されて,冥王星は太陽系外縁天体となった.惑星の定義,皆さんは御存知でした?私は知りませんでした.

あと地味に面白かったのが「教科書体」というフォントの紹介.小学校の教科書でしか使われないフォントがあったなんて.たしかに見ると懐かしい気持ちになった.


2019年10月6日日曜日

読書記録 地球上の全人類と全アリンコの重さは同じらしい。



椎名誠著 地球上の全人類と全アリンコの重さは同じらしい。を読んだ.

タイトルがいいですね.
これは,エドワード・O・ウィルソンというハーバード大学の教授がナショナルジオグラフィック日本版2006年10月号「アリの世界 その不思議な社会性を追求」という記事がもとにしている.
アリは小さいけれどたくさんいるもんな.

本文では,その事実から人間対アリの抗争について妄想する.
体重が同じ → 戦って白黒つける
というのは,若い頃格闘に熱中していた著者らしいというかなんというか.

本書はSFマガジンの「椎名誠のニュートラルコーナー」というコラムをまとめたもの.前作は2008年の「長さ1キロのアナコンダ」で,これも昔読んだ気がする.体の長さが1キロもあれば,神経伝達速度の問題で,しっぽがかじられてもその痛みが脳に伝わるまで何分もかかってしまうから,そんな生物はすぐに淘汰されてしまうというような話だったような.

本書の面白いところは,前述のウィルソン教授や,一般向けの科学書で有名なカクミチオ教授の本をベースにしてシーナ的SF妄想を読ませてくれるところだ.

完全にSF化された物語はアド・バードのように,現実世界とは違うシーナ・ワールドで物語が進む.一方で本書は現実の物理学を出発点にしているので,現実世界からシーナ・ワールドへの通路を覗き見ることができる.不思議の国のアリスのうさぎ穴みたいに.

しかも,本書は基本的に18話もコラムが入っているので,18個もうさぎ穴が覗けるわけです.お得ですね.

短いから電車の中などで気軽に読めるし,雑学欲も満たしてくれるので,おすすめ.

幻の黒船カレーを追え

水野仁輔著「幻の黒船カレーを追え」を読んだ 。「 銀座ナイルレストラン物語 」( 読書記録 )を読んで、同じ著者が出しているカレーの物語、ということで本書を読んでみた。  今回の感想はややネタバレ気味なので、新鮮な気持ちで読みたい方は、この先を読む前に、本を読んでほしい。  で...