2019年10月8日火曜日

読書記録 人生で大切なことは泥酔に学んだ



栗下直也著 人生で大切なことは泥酔に学んだを読んだ.

太宰治,三船敏郎,福沢諭吉など著名人の泥酔にまつわるエピソードを紹介する.あの有名人が実はこんな酒乱だったなんて……と絶句するような話が満載である.

人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった」とか,「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」など,いろいろ「大切なことは系」の本はあるが,本書の面白さはそれらとは一線を画す.

まさか名作「走れメロス」の誕生に,泥酔が深く関わっていたなんて……

著者はまえがきで下記のように述べている.
彼らはしくじりながらも,それなりに成功を収めた。
(中略)
「酒を呑んで泥酔しても胸を張れ」とは言わないが,くよくよ悩んでいても仕方がないではないか。令和を生きる社会人が反省しながらも,明日を元気よく生きる処方箋に本書をしてほしい。
しかし,どのエピソードもぶっ飛びすぎていて処方箋になど,とてもならない.どんなに酔っ払っても,軍艦から大砲をぶっ放したりしないでしょう?

また,有名人のエピソードを引き立てるのが著者自身の泥酔エピソードである.著者は1980年生まれとあるので同世代であり,中にはああ,これは,と親近感を覚え,後悔を呼び起こすエピソードもある.さすがに著者のように千葉ー神奈川間を往復したことはなかったが,京王井の頭線を数往復したことはある.富士見ヶ丘駅で車庫行きになり,そこから三鷹台駅まで歩いたんだよな……

私の話はどうでもよかった.本書に戻る.
読んでいて気がついたのは,あるエピソードで主人公だった人物が,別のエピソードにも登場することだ.例えば「汚れちまった悲しみに」で有名な中原中也は,ビール瓶のエピソードで日馬富士事件を絡めて暴力的なエピソードで登場する.30歳と若くしてなくなり,繊細なイメージを持っていただけに意外であった.その中原は,太宰のエピソードにもマジで怖いので絶対に酒場で会いたくない人物として登場する.
また,評論家の小林秀雄は自身駅のプラットホームから落っこちるエピソードで登場するが,その小林は中原のエピソードにも登場する.なんと同じ女性を取り合った間柄であったという.泥酔は泥酔を呼ぶのか……

本書で登場するのは教科書で見るような確立された,堅いイメージしかなかった人々なのだが,本書を読んだ後にはホントしょうがないやつらだ,というイメージに変わる.なので,酒を飲めない学生さんも,読んでおくと心理的な障壁を破壊できて良いかもしれない.

あと,個人的に「白壁王」とか「大伴旅人」が出てきたのもよかった.令和にちなんで「大伴家持」を読んだときに出てきた人たちだ.1000年前も,100年前も,今も,人間あまり変わらないな,と思った.

今年ぶっちぎりNO1に面白かった.
こういう本があるから読書はやめられない.

著者の書評リストを見つけた.どれも面白そう.次の一冊をここから選ぶのもよいかもしれない.

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