2019年6月30日日曜日

読書記録 「プロフェッション」

今野敏著「プロフェッション」を読んだ.



表紙(単行本)に惹かれた.警視庁の建物を螺旋階段が取り囲んでいて不安な気持ちになる.


警視庁を揺るがす大事件を想像させられたが,別に警視庁は揺るがなかった. そうではなくて,ST(科学特捜班)の個性的な面々が,それぞれの専門性を発揮して奇妙な誘拐事件を解決する話だった.

専門家の能力がすごいので,事件は淡々と解決してしまった印象である.

登場人物のキャラ付けのために,やや積極的にステレオタイプにはめにいっているように見えたのがちょっと気になった.

知らなかったけど,テレビドラマにもなっていたみたい.

2019年6月29日土曜日

読書記録 経営パワーの危機

三枝匡著「経営パワーの危機」を読んだ.大企業からベンチャー再建に乗り込んだ中堅ビジネスパーソンの奮闘記,という形で三枝氏が経営に関する持論を語る.



三枝氏は,スタンフォードMBAを持ち,BCGでのコンサルティングから経営の実践に転じ,バクスターシャ,大塚電子などの代表を歴任.バリバリの経営者だ.

本書が書かれたのは1994年で,今から25年も昔だけれど,内容は今でも古びていない.本書が実話をもとにしていて,かつ,企業活動における人間の本質をついているからなのではと思う.なのでオススメ.

本書の舞台のベンチャーは,物語の冒頭では明日をもしれぬ状況なのだが,新しいリーダのもとで急激に立ち直っていく.その時の手法が「トップが現場をまわって,赤字の原因を洗い出していく」という正攻法.ただ,正論かざせばいいというわけではなくて,開発,設計,製造,営業の各部門で対立を起こさないように人間力も駆使しながら進めていくところがリアルである.

正論と人間力の両方がカチッとあうとすごい,というのはとても共感できる.

その後,赤字脱出から成長へとステージが変わり,それぞれで難しい問題がでてくる.特に,新製品が立ち上がらず耐えるエピソードが印象に残っている.基本技術はできていて,一点物なら何度か作ったことのある製品だが,量産となるとなかなか思い通りにならないのである.それでも,主人公は戦略と辛抱と大胆な仕掛けによって乗り切っていく.読者は,主人公を通してベンチャーの経営を疑似体験できるだろう.

物語の合間にはコラムがあって,物語に対する解説が入る.これがあるので,単なる小説ではなく,ケーススタディ主体とする経営の教科書になっている.そういう面では「ザ・ゴール」の日本語版のような位置づけの本かもしれない.

1994年というとバブルは弾けていたと思うんだけど,本書からは日本企業の気概というものを感じて熱い.僕はハードカバーで読んだけど,その副題の「熱き心を失っていないか」がよかった.今の副題の「会社再建の企業変革ドラマ」より,よっぽど本書の熱を伝えていると思うんだけど.

2019年6月28日金曜日

読書記録 「PERって何?」という人のための投資指標の教科書

小宮一慶著「PERって何?」という人のための投資指標の教科書を読んだ.



内容はタイトルそのままで,いろいろな投資の指標について解説されている.
ただ,漫然と説明するのではなく,投資における意思決定の順に,ストーリー付けられているのが本書の特徴.なので,わかりやすくて,役に立つ感じがすごい.

そのストーリーというのは,全体を見てから細部に入れ,というもの.
つまり,まずは世界や日本の経済の分析,次は個々の企業の分析,最後に株価の分析となる.

以下,紹介されている指標の一例を挙げる:

経済分析の指標

基本的に政府の発行している統計を見る.


企業分析の指標

基本的に財務三表(賃借対照表BS,損益計算書PL,キャッシュフロー計算書CS)を見る.

  • 営業利益: 本業での実力値.
  • 流動比率: 流動資産と流動負債の割合.流動負債の割合が多いと倒産の危険性が高まる.事業ドメインごとに目安がある.
  • ROE: 自己資本利益率(Return on Equity).投資家が預けたお金で効率よく利益を稼げているかの目安になる.
  • ROA: Return on Asset.ROEと違って,分母が資産全体.負債と純資産の両方を見ることになる.
  • キャッシュフローマージン: 売上高にたいしてキャッシュを稼ぐ力.
  • フリーキャッシュフロー: 会社が自由に使えるお金.

株価分析の指標

たいていネット証券のサイトなどで見られる.

  • PER: 株価収益率.純利益と株価の関係.あまり高いと期待されすぎのサイン.
  • EPS: 純利益と発行済株式総数の関係.EPSが高まると収益率が高まったということ.

個々の用語についてはネットで調べることが可能なのだが,それらをつなげて判断をするには,ストーリー付の流れが必要だ.本書はその良いガイドになってくれる.


2019年6月27日木曜日

読書記録 御社の働き方改革,ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社

白河桃子著「御社の働き方改革、ここが間違ってます!」を読んだ. 著者は,政府の働き方改革実現会議で有識者議員を務めた働き方改革の専門家.タイトルは過激だけど,ダメ出しはあまりなくて,むしろ副題の「残業削減で伸びるすごい会社」について書いてあるポジティブな本.



働き方改革実現会議で何が一番大きく変わったかというと,罰則付きの残業上限規制が決まったこと.本書が書かれたのは2017年なので,まだ施行前だったのだが,厚労省のページによると「大企業は2019年4月~」とのことなので,一部の企業ではもう始まっている.なお,「中小企業は2020年4月~」とのことで,来年度からだ.

罰則は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」とのこと.これまで罰則がなかったので,あまり実効性がなかったが,今はそうではなくなった.

以下,気になったポイント.

働き方改革は,経営改革.

無制限の残業はできなくなったので,決められた時間で成果を出すことが労働者に求められるようになった.いるだけで評価されてきた今までと違って,労働者にとってよりシビアな環境になる.

一方,経営者にも変化が求められる.具体的には,
生活残業をなくすために給与を底上げしたり
浮いた残業代を成果報酬に転換したり
と,成果に報いることだ.

もし,経営者が残業分の人件費が浮いたと喜んでいるだけなら,それは労働者にも伝わり,やがて改革は後戻りしてしまう.


成果のすり替えに気をつける

「利益を出せ」という経営層の目標が,組織の階層を下るにつれて,いつのまにか「売上を上げろ」にすり替わっている.部長あたりだという.本来であれば,残業代(コスト)が上がれば利益は減るので,無理な受注は控えるなどするはずだ.

なぜ,売り上げにすり替わるかについて言及はなかったが,利益を上げるためには構造的な改革が必要だが,売上を上げるには現場の頑張りでなんとかなってしまうためではないかと思う.利益の目標が厳しい場合に,売上については「頑張って」上げて
「利益は未達ですが,売上は伸びており,成長は続いています.今期は投資の時期で,次期はかならず利益につなげます」
とエクスキューズする,と.

もし,そうだとすると,部門ごとの個別最適化の弊害がでているということだろう.全体最適をしようとすると,やはり経営の問題ということになるのだろうか.

働き方改革のフェーズ

本書では,下記の3つのフェーズで働き方改革が進んできたと述べている.

第一次均等法: 女性のみ.マッチョ滅私奉公な男性にあわせる
両立支援:女性のみ.時短などの制度充実,育休取得100%など.
働き方改革:男女.長時間労働の規制.選べる働き方.

今は,3番目の改革で,男の側にも改革の手が入ったのがこれまでの違い.


大手マスコミの女性社員と著者による座談会

参加者は,一人か二人子どもがいる.本音が出ていて興味深かった.
夫は頼れない.会社も拘束してくる.両親も遠くに住んでいる.のでベビーシッターやファミリーサポーターを最大限活用し,「計算するのがこわいくらいお金をかけて」なんとかこなしている.

「三人子どもがいると,ベビーシッターは二人雇わなければいけないんですよね.それも,みんな知らない.」

ええ,知りませんでした……

制約社員

本書では「制約社員」という言葉が使われている.
子育てや介護などで働くことができる時間に制限を受けている社員のことを指す.

著者の「制約社員こそマネージャーの視点とスキルが必要」という主張が興味深い.
プレイヤー思考からの脱却とも言いかえられる.
マネージャーは「他者を使ってものごとを成し遂げること」が求められる.
制約社員の場合も,自分の時間が使えない分,人の力を借りながら成果を出すことを考えないと,成果を大きくすることはできない.

ここで,著者は「ボスになれ」とか「仕事を押し付けろ」と言っているわけではない.本書では,マネージャー思考への転換の推奨のあとに,リーダーシップの必要性も説いている.高圧的に出るのではなくて,感情や信頼関係に基づいて引っ張っていくべきだ,と.

まとめ

最後に述べた制約社員については,三浦展氏の「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代」でも触れられていた.毎日…では問題提起までだったが,本書で述べられている働き方改革は,その解決策である.

人間生きていれば病気になることもあるし,けがをすることもある.また,社会を持続させるには子どもを生み育てなければ,ならない.そうなると,そもそも制約のない人間なんていないはずなのに,それを無視してきたのがこれまでの企業,社会だったのではないか.その歪が過労死という形で労働者をおそったり,また,「超高齢化社会」という形で社会に立ちはだかったりしているのではないか.

働き方改革によって,日本の企業や社会をサステイナブルなものにしていかなければならない.

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読書記録 サバイバル英文法 「読み解く力」を呼び覚ます

関正生著 サバイバル英文法 「読み解く力」を呼び覚ます を読んだ.
著者は,人気の塾講師で,英語に関する著書を多数書いている.



本書ではサバイバルキットのように最小限の道具で,英語の「森」を生き抜くすべを教えている.型にはまったルールよりも,より広く通じる英語の感覚を教えてくれていてなるほどなぁと思った.

例えば,本書では
「定冠詞の'the'はみんながせーのでこれ,と指をさせるもの」
と教えている.
従来の「一回目は'a',二回目は'the'」というルールも,それに当てはまるし,また,太陽が'the sun'になったり,アメリカが'the United States of America'になるのもそう.

このように,本書では冠詞や名詞の可算,不可算,時制,文型,仮定法,助動詞,受動態,倒置などについてわかりやすく,また応用範囲の広いイメージを教えてくれる.

仕事だと,英語でお願いをしないといけなくて,そのときに役に立ちそうなのが'suggest型'の説明と'should'の語感についてだった.

suggest型とは,SV that 〜の形を取り,Vの部分に提案や命令の意味の動詞が来るパターンだ.で,イギリス英語だと〜の部分にshouldが来て,アメリカ英語だとshouldはなくて動詞が原形になる,というルールがある.

イギリス英語でshouldが来るのは,that節内が現実におきていないこと(=反事実)であるため.なので,このshouldは仮定法のshouldだ,ということ.次にアメリカ英語で原形になるのは,単純に命令文だ,と.

両方とも,命令が起点になっている.このイメージがあれば,時間が立っても芋づる式に記憶を掘り出せそう.

助動詞shouldについてはあまり使わないようにしようと思った.まずshouldはshallの過去形である.本書では,shallが聖書で使われている例(神の意志を元に…する)を説明し,shallのイメージを付けたあと,shouldの過去形には仮定法(反事実)のニュアンスが含まれることを説明し,shouldを「すべき」と覚えない方が良いと教える.shouldは(本来ならば)...して当然というかなり強い意味を持っているのだ.

これを読んで,仕事ではshouldは使わないようにしようと思った.

全編を通して良いなと思ったのは例文のチョイスだ.
単純すぎず,複雑すぎずで,例文を読むと範囲などに学びがある.
手元において,都度読み返したい本である.

読解編もあるみたい.読みたい.
 

2019年6月26日水曜日

読書記録 毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代

三浦展著「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代」を読んだ.



著者は社会や消費や都市の動向の分析を生業としている.
本書では過去15年の間に注目すべきキーワードが,1件数ページほどで紹介されている.
2016年の本なので,2000年代のキーワードと見てよさそう.シェアとか一人焼肉とか.

タイトルにもなっている「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代」とは,Appleのスティーブ・ジョブズのことを言っている.
有名な話だが,ジョブズは同じ型の黒いタートルネックをたくさん持っていて,いつもそれを着ていた.
日常的なことに意志力を使うことを避け,その分仕事に回したいということだそうで.

本書でさすがだなと思ったのは,単にジョブズの例で終わるのではないところである.
大前研一とか向田邦子など日本の著名人を引き合いに出して日本ではどうなのか,また更に進んで一般の人はどうなのかについてまで言及しているところだ.
なので,辞典的に参照する,というよりは,読んで考えさせられる本になっている.

本件について言えば,ユニクロシャツの私はせめて古いのをそのまま着続けるのはやめようと思った.
その他,印象に残ったキーワードは「自己関与性」だ.
これは,与えられたものにお任せという受動的な態度ではなくて,自分が能動的,主体的にものに働きかける態度のことを指す.
LPや自動車などについて例が挙げられていたが,その中でスマホの自己関与性についてはへえと思った.

その例の出し方がソフトウェア開発者から見るとちょっと不思議だった.
「壊れやすい製品を出しておいて,ユーザが好きなケースを選べるようにしている」をいう説明だったからだ.
ソフトウェア開発者の視点からすると「アプリを好きに入れられる」のが自己関与性かと思ったが,その指摘は意外にも外面についてだった.
「落としたら割れるような壊れやすい製品は日本メーカーは作らない」というのはなるほどで,クレームのことを考えたらハード屋さんは反対するよなと思う.

コア機能やデザインが優れていたら,今の消費者は壊れやすさを(ある程度まで)受け入れて(工夫して回避して)使ってくれる,ということだろうか.

先日,NICTのオープンハウスで石黒浩先生の講演を聞いた際には
「今のロボットは壊れやすすぎる」
「コストを考えてスマホの部品を流用しているためだ」
とおっしゃっていた.

自己関与性の例から考えると「壊れやすさをあえて残して,ユーザ側の対応である程度補えるようにする」ようなデザインも一つの可能性としてあるのではないかと思った.

このように,本書は自分の興味についての思考を深めるきっかけとなる良い本でおすすめ.

2019年6月24日月曜日

読書記録 珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは

岡崎琢磨著「珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは」を読んだ.事件簿1,事件簿2からの続き.


今回は関西のバリスタがその技術を競う「関西バリスタコンペティション」が舞台だった.このコンペは歴史は浅いものの大手食品メーカーが後援し,賞金額が大きく,注目度も高い.

タレーランのバリスタ切間美星も,予選をくぐり抜けて初めて決勝に進出するが,そこで異物混入事件が発生し,助手役のアオヤマも容疑をかけられてしまう.切間バリスタは,コンペでの戦いを続けながら,真犯人を推理する.

アオヤマと切間バリスタの関係は相変わらずな感じで,安心して掛け合いを楽しめる.
一方で,今回はこれまでの話とは違い,事件性の高い物語だった.
よりミステリーっぽくなったというか.
これはこれで良いと思うのだけれども,なんとなく読後感が悪いように感じる.

個人的な印象だが,たぶん,舞台設定の問題なんだと思う.異物混入事件が発生したのに続けられるコンペって,今の時代には感覚的にありえない,と思ってしまった.安全とか,倫理とか.小説とはなかなかに難しいものだと思った.

今回もいろいろなコーヒーの知識が披露された.
ピーベリー」についてはこの本で初めて知った.
いろんなこだわりがあるんだね.

2019年6月23日日曜日

読書記録 珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る

岡崎琢磨著「珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る」を読んだ.
1が良かったので,続きで読んでみた.



今作ではバリスタの妹「切間美空」が登場し,彼女を中心に話は進む.今回の事件は,姉妹の幼い頃の秘密と関係していて,段々と登場人物の過去が明らかになっていった.

話としては,割と見通しがよく一本道に進んだように思う.推理する,というよりは顛末を見届ける,というような感じだった.

伏見稲荷,銀閣,金閣など,今回も京都の観光名所が登場した.
僕は伏見稲荷に行って稲荷山に登ってみたくなった. 
上まで行くのは,かなり汗をかくそうなので,秋の紅葉の時期に行くといいかもしれない.

次は,続きの事件簿3を読む.

2019年6月15日土曜日

読書記録 酒と家庭は読書の敵だ。

目黒考二著「酒と家庭は読書の敵だ。」を読んだ.



著者は,評論家の北上次郎であり,また,本の雑誌の元発行人でもある.

椎名誠の「本の雑誌血風録」や「あやしい探検隊」シリーズで,目黒氏はものすごい数の本を読んでいて,かつ野外に出ると釜炊きをしているイメージを持っていた.

印象に残ったのは次の箇所.
「本は読まなくても買わなくてもいい.見るのがいちばんである.」
「現実には本を買って読み,そのうえ原稿まで書いてしまうが,それはまだまだ私の修行が足りていないのである.」

もっと肩の力を抜いて本を読んでいいんだな,と思わされた.

2019年6月14日金曜日

読書記録 珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら,あなたの淹れた珈琲を

岡崎琢磨著「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら,あなたの淹れた珈琲を」を読んだ.本書は「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉として出版されたとのこと.屍人荘に続いて,またミステリーだ.



京都の喫茶店「タレーラン」が舞台で,主人公の「アオヤマ」と美人バリスタ「切間美星」の出会いから物語は始まる.表紙からも想像されるように,ミステリーと言っても密室殺人とかそんな重いものではない.

ライトノベル的に気楽に読めるし,謎解きもしっかりあるし,またコーヒーのうんちくは勉強になるし,京都の観光も楽しめるという一冊で何度も美味しい本である.

なお,タイトルのタレーランはコーヒーに一家言ある著名人.
タレーランはフランスの政治家・外交官で,美食家としても有名. 僕の好きなマンガの「大使閣下の料理人」にも「料理外交」を代表する人物としてしばしば登場する.なので,珈琲店バルザックの事件簿だったら,多分読んでなかったですね.

本書の冒頭では,タレーランの
「良いコーヒーとは,悪魔のように黒く,地獄のように熱く,天使のように純粋で,そして恋のように甘い」
という言葉が紹介されている.

ここで,甘いとはエスプレッソに入れた砂糖の甘味だそうだ.
本場イタリアでは,砂糖を入れるのは当たり前で,ブラックで飲むと変な目で見られるとか.

……ええ,私はブラックで飲んでいました.モグリですね.

本書の難点としては,ところどころに鼻につく表現があることだ.例えば「んぐぁ」とか.話が盛り上がっているところで多用されるので余計に気になった.勘弁してほしい.

NG表現をOK表現に変換するSeq2seqとかできないかな,とふと思いついた.

それはさておき,本書は文章がしっかりしていて読みやすく,通勤のお供にはもってこいの良書だった.読後感も良かった.続編が5巻まででているので,順次読んでいるところだ.

 

2019年6月9日日曜日

読書記録 屍人荘の殺人

今村昌弘著「屍人荘の殺人」を読んだ.鮎川哲也賞受賞作.オススメ.
 

ミステリー・サークルに所属する大学生である主人公が,演劇サークルの合宿に参加することになって,そこで殺人事件に遭遇する.

いわゆる密室殺人もので,密室の舞台装置がキャッチーだった.
確かにアレはゲームやテレビシリーズがウケてたし,ミステリに使っても良いと思う.本作でのアレは海外のと違って,日本風で描写がソフトだった.エンターテイメントとしてはこれくらいでいいと思う.

また,本作はプレゼンテーションが親切で,読者が迷わないように工夫されていてよかった.電車の中などあまり集中できない環境でもスラスラと読めた.

例えば,舞台となる山荘の構造がややトリッキーだが,見取り図を巻頭につけていてくれている.また,登場人物が増えてきて誰だっけ?となってきた頃に語呂合わせで登場人物が見分けられるように特徴を説明してくれたりしている.

今は,小説もスマホと時間を奪い合わないといけないので,読みやすくする,投げ出されないようにする工夫は求められているのだろうなぁと思う.

なお,ジャンプ+でマンガ版も連載されている.僕はこっちを先に読んで続きが気になったので原作を読んだ.


続編も出ているので,今度読む.

幻の黒船カレーを追え

水野仁輔著「幻の黒船カレーを追え」を読んだ 。「 銀座ナイルレストラン物語 」( 読書記録 )を読んで、同じ著者が出しているカレーの物語、ということで本書を読んでみた。  今回の感想はややネタバレ気味なので、新鮮な気持ちで読みたい方は、この先を読む前に、本を読んでほしい。  で...