三枝匡著「経営パワーの危機」を読んだ.大企業からベンチャー再建に乗り込んだ中堅ビジネスパーソンの奮闘記,という形で三枝氏が経営に関する持論を語る.
三枝氏は,スタンフォードMBAを持ち,BCGでのコンサルティングから経営の実践に転じ,バクスターシャ,大塚電子などの代表を歴任.バリバリの経営者だ.
本書が書かれたのは1994年で,今から25年も昔だけれど,内容は今でも古びていない.本書が実話をもとにしていて,かつ,企業活動における人間の本質をついているからなのではと思う.なのでオススメ.
本書の舞台のベンチャーは,物語の冒頭では明日をもしれぬ状況なのだが,新しいリーダのもとで急激に立ち直っていく.その時の手法が「トップが現場をまわって,赤字の原因を洗い出していく」という正攻法.ただ,正論かざせばいいというわけではなくて,開発,設計,製造,営業の各部門で対立を起こさないように人間力も駆使しながら進めていくところがリアルである.
正論と人間力の両方がカチッとあうとすごい,というのはとても共感できる.
その後,赤字脱出から成長へとステージが変わり,それぞれで難しい問題がでてくる.特に,新製品が立ち上がらず耐えるエピソードが印象に残っている.基本技術はできていて,一点物なら何度か作ったことのある製品だが,量産となるとなかなか思い通りにならないのである.それでも,主人公は戦略と辛抱と大胆な仕掛けによって乗り切っていく.読者は,主人公を通してベンチャーの経営を疑似体験できるだろう.
物語の合間にはコラムがあって,物語に対する解説が入る.これがあるので,単なる小説ではなく,ケーススタディ主体とする経営の教科書になっている.そういう面では「ザ・ゴール」の日本語版のような位置づけの本かもしれない.
1994年というとバブルは弾けていたと思うんだけど,本書からは日本企業の気概というものを感じて熱い.僕はハードカバーで読んだけど,その副題の「熱き心を失っていないか」がよかった.今の副題の「会社再建の企業変革ドラマ」より,よっぽど本書の熱を伝えていると思うんだけど.
2019年6月29日土曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
幻の黒船カレーを追え
水野仁輔著「幻の黒船カレーを追え」を読んだ 。「 銀座ナイルレストラン物語 」( 読書記録 )を読んで、同じ著者が出しているカレーの物語、ということで本書を読んでみた。 今回の感想はややネタバレ気味なので、新鮮な気持ちで読みたい方は、この先を読む前に、本を読んでほしい。 で...
-
聴講状況 探索のセッションを聞いたのだが,A*の最近のところとかを聞けて面白かった. RTA*の拡張として,不確実な問題空間(環境が変化する場合)の話とか. A*の並列化とか. 探索空間は二つの定義の方法があるよ,とか. 招待講演1 ミンスキー 先生のご講演を聴く 最近 翻訳がで...
-
動機 MacOSX 10.6.6のpython 2.6処理系で,numpy, scipy, matplotが使いたい. 手法 Macportsを使ってインストールする. 手順 処理系の選択: macportのpy26-* sudo port install py...
-
聴講状況 ロボットのセッションを二つ 最適化のセッションを一つ ロボットと人のコミュニケーションと言語に関するオーガナイズドセッションを一つ 質問は二件. 初めのセッションの初めの発表 の初めの質問を勝ち取る.ロボット持ち歩くのはなぁ.携帯にマニピュレータがつく,とか? センサネ...
0 件のコメント:
コメントを投稿