2013年5月11日土曜日

書籍FabLifeを読んだ

FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)を読んだ。

 著者の田中浩也先生は、MITの「(ほぼ)なんでもつくる方法」という14週間の講義・演習に参加した、日本のファブラボ・ムーブメントのリーダー的の一人である。

 この本の山場は、2章の「(ほぼ)なんでもつくる方法」だ。講義の様子を時系列を追って説明していて、読んでいる自分も疑似体験できる。その進行は、まさに弾丸ツアーであり、
  • 電子回路の設計
  • ウォータージェットカッター
  • ネットワークと通信
といったテーマが毎週1つ2つというスピードで進んでいく。それも、単に座学で終わるわけではなく、原理を学んだあとは、自分で作ってみて、その経験を皆で共有するという一連のサイクルを毎週繰り返す。

すでに、大学教員の立場である著者が、一学生に戻ってこの「重い」講義をとる決断がすごいと思う。
 いきなり著者のように行動するのは無理だとしても、幸い今はオープンコースウェアで日本にいながらにして、講義の様子を垣間見ることができる。実際に参加することで得られるものとは、比較はできないだろうが、やらないよりはやってみること、だろう。

参考リンク:MITの「(ほぼ)なんでもつくる方法」のオープンコースウェア

 3章で、ファブラボ・ムーブメントを通した世界の今と未来を見せてくれる。鎌倉とつくばを例にした地域性による差異に関する考察は、今後日本の地場産業の未来を見通す上での参考になると思う。
 また、パーソナル・ファブリケーションツールの普及とコストに見合う最小ロットの関係についての考察は、経済の変曲点を見つける上で重要な視点だと思う。果たして、ファブラボ・ムーブメントは、イノベーションのジレンマ (Harvard business school press) でいうところの「破壊的イノベーション」をもたらすものなのだろうか。

以上。

東京の図書館横断検索で見つかります。
O'ReillyのEbookもあります。
amazonでも買えます。

2013年5月1日水曜日

f.Laboに行ってきた

 昨日、調べたf.Laboにいってきた。f.Laboは月、水、金が開館日で、予約なしでも施設見学はできる。ちなみに、水曜午後は共有フリータイム・見学日になっており、見学の予約をしておけば、スタッフの方々が応対してくれるそうだ。

f.Laboの入り口。この看板もレーザーカッターで自作したもの。

 中に入ると、右手の棚に、作品が展示されている。上段中央に見えるトロフィーや熊のような造形のほか、上段手前に見えるような駆動装置と制御回路を持った作品まである。その下の段は、3Dプリンタで出力したカメラ用アダプタやペットボトルキャップだ。

陳列された作品。

 左手の机にも作品が並んでいる。手前にあるのがレーザー加工装置で模様を描いたベルトなど。その右手奥にあるのが3Dプリンタ。現在、機器選定中で、試用している最中とのこと。

手前:陳列された作品。右手奥の緑色の機械:3Dプリンタ。

 そのほか、椅子作成コンテストで作られた作品も展示されていた。決められた量の合板だけを使って、いかに丈夫な椅子を作るかを競うのだそうだ。下の写真のマッシュルーム型の椅子は、抜群の安定感を誇ったという。座ってみたが、たわみやがたつきは全くなかった。

コンテストで抜群の安定性を見せた椅子

 その他にも、窓側に大きめの作品が展示されていた。

窓際にも作品が展示されていた。

 平日のため、人が少なかったので、スタッフの方二人にお話を聞くことができた。はじめに対応していただいた男性の方は、IAMASの研究補助をされているそうだ。f.Laboの概要について説明していただいた。

 f.Laboは、4月に運営母体が変わり、再立ち上げの最中とのこと。新規利用者が受ける必要のある導入ワークショップは5月の中旬から開始の予定で、今は去年利用していた方々だけの利用となる。導入ワークショップを受講すると、フリータイムと共有フリータイムの時間に、加工機を利用することができる。フリータイムは予約制であり、共有フリータイムは予約なしに複数人で加工機をシェアする。利用料金は無料だが、設計データをオープンにし、作業の様子の撮影に同意する必要があるとのこと。これは、コミュニティへの還元と、IAMASの研究のためだそうだ。

 次に、女性の方に加工機の説明をしていただいた。下の写真がレーザー加工機。右の横長の筐体が、レーザーで物体を切断、切削する機械で、左の縦長の筐体が、排気から粉塵を取り除く機械だそうだ。

レーザー加工機

 デモとして、f.Laboのロゴを作っていただいた。左上の赤いヘッドからレーザーが照射される。みるみるうちに形ができるのを見ると、子どもの時に感じたようなワクワク感で満たされてきた。

 よく見ると、レーザーが照射された場所から煙が立ち上り、上部のファンに吸い込まれていく。たしかに、コンピュータが隣にあるような環境で使うには粉塵除去装置は必要だ。

f.Laboのロゴを加工中

 下が加工後のロゴ。木の焦げたにおいがする。香ばしい。加工時間は1、2分で非常に高速。表の看板と同じデザインだが、目測で1/10くらいの縮小版。ベクタデータなので、拡大縮小は手軽にできる。

レーザ加工機で作成されたf.Laboのロゴ

 夏に帰省する時には、導入ワークショップを受けて、自分のデザインを作成することを約束して、f.Laboを後にした。

幻の黒船カレーを追え

水野仁輔著「幻の黒船カレーを追え」を読んだ 。「 銀座ナイルレストラン物語 」( 読書記録 )を読んで、同じ著者が出しているカレーの物語、ということで本書を読んでみた。  今回の感想はややネタバレ気味なので、新鮮な気持ちで読みたい方は、この先を読む前に、本を読んでほしい。  で...