保江邦夫著「戦闘機乗りジイさんの世界一周 やってはいけない大冒険!!」を読んだ。
著者は大学で教鞭をとる物理学者。本書は、著者とその父親のふたりで世界一周した旅行記である。父親は、第二次世界大戦で戦闘機「飛燕」に乗って首都防衛任務に就いていた。タイトルの「戦闘機乗りジイさん」はそこから来ている。
「やってはいけない大冒険」の方は、おそらく超ハードな旅程から。行先を決めるにあたって、父親から
- いまさら大都市を見ても仕方がない
- 同じ観光地に二日以上いるのもつまらない
という要望を受けたため、二週間にわたって移動し続けるという超ハードな旅程となった。
しかも、飛行機で飛び回るだけでなく、車でのアルプス越えやロッキー越え(しかも次の飛行機に遅れないように)をしている。父親が70代、著者が40代であるが、年齢を考えてもとても並のことではない。そういう意味で、確実に「冒険」であった。
印象的だったのは、いくつになっても親からは学ぶことがある、ということだろうか。
基本的に(著者から見れば)やることなすことケチをつける怒りっぽい父親なのだが、いざ、という時には優しい。例えば、険しい深夜の山道を何時間も何時間も走っても、まだ目的地に着かないとき
「この分ならホテルに着くのは深夜になる。途中で飯を食っていたらもっと遅くなる。次のガソリンスタンドで走りながら食べられるような食料と水を買い、ゆっくりと走ろう。こういう体験も勉強になる」
と言って著者をなだめる。
怒っているときは問題が大したことない時で、本当に問題になるような状況では極めて冷静になって打開策を考える。それが生きて終戦を迎えることができた一因と著者は分析する。
また、戦闘機乗りだった父親は行く先々の国で、航空関係者から敬意をもった対応をされる。もちろん、著者の交渉力もあってのことだと思うが、それでも、やはりうれしいことだろう。表紙の写真も、パイロットの好意で特別に旅客機のコクピットで撮影したものだ。
そういうわけで、冒険としても、家族の物語としても興味深い本であった。もう絶版になっているので、書店で買うのは難しいかもしれないけれど、図書館などで探して読む価値のある本。
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