図書館で見かけて気になって借りたら、以前にも読んだことがあった。1章読んで気が付いた。逆に言うと、表紙を見ただけでは気づかなかった。
そもそも、私は「阪急」に弱いようだ。親がもともと阪急系列の会社に勤務していたことも関係していると思う。
とはいえ、タイトルだけで読み通すほど、私は読書が得意ではない。この本はやはり面白い。
阪急今津線と主人公たち
本書の舞台は阪急今津線の8つの駅である。前半では電車は宝塚駅を出発し、西宮北口駅に至る。後半では、西宮北口駅で折り返し、宝塚駅まで戻っていく。それぞれの駅が一つの章に対応していて、駅ごとに主人公が変わっていく。
それぞれの主人公は初めは全くの他人である。偶然近くに乗り合わせた、というだけの縁なのだが、やがて人生を変えるような出会いになっていく。
現実世界では、電車で人と関わり合いになることなどまずない。しかもこの頃ではノイズキャンセリングヘッドホンで耳もふさいでしまっているので、人の話を小耳にはさむこともない。その意味で、この小説の阪急電車は、ある意味で時代劇の中の人情残る江戸の下町、みたいなものかもしれない。
また読み返すかも
本書の主人公は、老人と幼児、高校生、大学生、新社会人と様々である。大学生のボーイミーツガール的な展開もあれば、PTAの胃の痛くなるようなつらい人間関係もある。自分のライフステージが変われば、感情移入する主人公も変わってくるだろう。
そういう意味で、本書は何度も読み返すことになるかもしれない。
ちなみに、今回は「下らない男ね」「やめておけば?苦労するわよ」という老婦人の言葉が刺さった。そう言われている男には決して同情できないが、かといって、老婦人のように切ることもできない。自分を棚上げするなどというような思考をしていては、決して出せない切れ味である。私もこのまま歳を重ねていけば、(若いころの自分を忘れて)ズバッと切るようになっていくのだろうか。それとも、人の性質というのはそうそう変わらないのだろうか。
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