銀座ナイルレストラン物語 表紙の写真は看板料理の「ムルギランチ」 |
本の感想の前に
この本を読んだのは2020年の2月のことで、COVID-19の流行が国内で始まったころだった。緊急事態宣言、在宅勤務、などいろいろな変化があり、読書やブログを書くモチベーションを失ってしまっていた。いま、ワクチン接種が進みようやくCOVID-19の出口が見えかけたような気がしている。ブログを書く気力も戻ってきたので、まずは古い記事の下書きから投稿しようと思う。
第一弾はこの「銀座ナイルレストラン物語」だ。この本で日本のカレー店の源流を知り、著者の熱にあてられて、家でスパイスカレーを作るようになった。
1年半も前のことなので、細部は記憶がおぼろげであるが、大枠だけでも書き残せたらと思う。
本書は、1949年創業のナイルレストランの創業から現在までを、創業者父子を追う形で書いている。
面白いのは、インド料理を作ったのは父ナイルではなく、日本人の奥さんだということ。彼は経営者であって、料理人ではなかったのだ。
銀座ナイルレストラン物語の感想
ナイルレストランは銀座にある、日本初のインド料理店。インドカレーを初めて出した店、というと新宿・中村屋が思い浮かぶが、それは喫茶事業の一環であり、専門店としてはナイルレストランが初なのだという。本書は、1949年創業のナイルレストランの創業から現在までを、創業者父子を追う形で書いている。
ナイルレストランの立ち上げ
初代のA. M. ナイル氏(以後、父ナイル)はもともとはインド独立を目指す革命家で、京大留学のために戦前、日本に渡ってきた。1947年にインドがイギリスから独立すると、ナイル氏の革命活動も終わる。そして、食べていくために始めたのがインド料理店であった。面白いのは、インド料理を作ったのは父ナイルではなく、日本人の奥さんだということ。彼は経営者であって、料理人ではなかったのだ。
伝統の継承
本書の次の主人公は息子のG. M. ナイル氏。彼は看板商品のムルギランチを決して変えなかった。違うことがやりたいなら別の店としてやる、ナイルはナイルなので同じものを大切に作り続けた。
ただし、彼は父ナイルとは違い、自分自身が料理人であった。万博のために来日したインド最高のホテルの料理人から直々に料理の指導を受けた。
興味深いのはその修行法。徒弟制ではなくて、家庭教師制なのだ。お金を払って、自分が納得するまで教えてもらう。「見て盗め」という職人の世界とは一線を画している。
以上のように、安易な現状維持のためではなく、料理人として積極的な判断で、レシピを守っていた。だからこそ、店は70年以上にわたって繁盛しているのだろう。
著者の情熱
登場人物も魅力的なら、著者の水野仁輔氏もすごい。全編を通して、隙がない。正確に、しかも面白く伝えたい!という情熱が伝わってくる。
彼は、本書のほかにも「幻の黒船カレーを追え」というカレーに関するノンフィクションを書いている。ぜひ読みたい。
すごい本に出会った。読んで良かった。
おわりに
私はまだナイルレストランに行ったことはないが、いつか気軽に外食ができるようになったなら、ぜひ行ってみたい。すごい本に出会った。読んで良かった。
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