2013年9月18日水曜日

TED ニール・ガーシェンフェルド:ファブラボ(つくりかたの未来)


 FabLabや、パーソナル・ファブリケーションの世界的リーダーであるMITのニール・ガーシェンフェルド教授のつくりかたの未来についてのビデオを見た。

 非常に印象深い講演だったので、ぜひ、見ていただきたい。音声は英語だが、17分と短く、日本語字幕も付いているので、安心だ。



講演を聴いて考えたこと


「地方の農村では、子供たちは画面で情報を得るだけでなく、世界を判断して変えていかなければなりません」

 これは、世界各地でFabLabを立ち上げて、現地の人々と一緒にものづくりをした時のコメントである。たしかに、現在の世界では、情報処理と、現世界の物質の操作の間に、断絶を感じる。

 例えば、農業にマシンを使うにしても、現状、知識の取得には情報処理専用のマシン(PC)を使い、作物の状態を測るには計測専用のマシン(観測装置)を使い、また、畑を耕すには操作専用のマシン(耕耘機)を使っている。どれも、内部には多かれ少なかれコンピュータが使われているのに、それらは繋がっていない。

 このため、畑を耕してはくれないコンピュータに時間を割くよりは、直接自分の手で世界に働きかけようとするのだろう。長期的には、まず、知識を得たほうが良かったとしても。

 将来的に見れば、情報処理と現実世界の操作が繋がっていくことは、自然なのだろう。しかし、現在の技術でそれを実現するには、技術面、コスト面でまだ見合わない。
 そこで、ニール先生は、電子的操作という枠にとらわれないコンピューティングという切り口で、そのギャップを埋めようとしている。そして、冒頭の話に出てきた、インターネット・ゼロや、注ぎ足すだけで能力の向上するデバイス、またそれらの先の研究につながるのだろう。

 略歴には、ビデオでも触れられていた細かい泡の流れで論理回路を作るというユニークな研究の他にも、世界初の量子コンピュータの実装を作るといういかにも世界最先端!という研究が挙げられており、深い科学的な裏打ちの上で、未来のコンピューティングやエンジニアリングに取り組んでいらっしゃる先生なのだということを知った。

 私は、情報処理・計測・操作というと、すぐに「ロボット」と条件反射してしまうが、もっと先を見た研究のビジョンに感服した。

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