冲方丁著 光圀伝を読んだ.水戸光圀公をモデルとした時代小説.大河ドラマでやった方がいいと思う.絶対面白い.(と思って検索してみたらこんな署名サイトがあった.しかし,この事件でもう無理なのか…)
光圀公といえば,テレビドラマの水戸黄門のイメージだった.
「助さん,格さん,懲らしめてやりなさい」
「もういいでしょう」
「この紋所が目に入らぬか」
「ははー」
の定型で,究極のマンネリ.正直,あまりいいイメージはなかった.
本書の光圀はアツい.
冒頭は,老齢に達した光圀がある男を殺めるシーンで,そこから幼少期の回想に入っていく.最初から宮本武蔵や沢庵和尚が登場し,武と知の極みを光圀に見せる.光圀の時代は戦国と太平の端境期で,光圀は武から知,特に詩歌や歴史編纂へと傾いていくのだが,その二人は読者にとってよい道標となっていて,物語に入りやすい.私はここで掴まれた.
ちゃんとその理由は最後に回収されるのだが,あーーーとなった.なるほど,これはすごい.ネタバレしたい.
SF作家が科学的事実の間をうまく縫って物語の核となるテクノロジーを生み出すように,史実と史実の間をうまく縫ってすごい歴史エンターテインメントを作り上げている.著者がSF出身(マルドゥック・スクランブル)だからそう感じるのか.
また,天地明察の渋川春海も登場する.私は既読だったので思わずニヤッとしてしまった.
それから,筒井康隆の解説も良かった.ネタバレしたいけど,書けないよね,という共感が得られた.
おすすめ.
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