2019年6月24日月曜日

読書記録 珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは

岡崎琢磨著「珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは」を読んだ.事件簿1,事件簿2からの続き.


今回は関西のバリスタがその技術を競う「関西バリスタコンペティション」が舞台だった.このコンペは歴史は浅いものの大手食品メーカーが後援し,賞金額が大きく,注目度も高い.

タレーランのバリスタ切間美星も,予選をくぐり抜けて初めて決勝に進出するが,そこで異物混入事件が発生し,助手役のアオヤマも容疑をかけられてしまう.切間バリスタは,コンペでの戦いを続けながら,真犯人を推理する.

アオヤマと切間バリスタの関係は相変わらずな感じで,安心して掛け合いを楽しめる.
一方で,今回はこれまでの話とは違い,事件性の高い物語だった.
よりミステリーっぽくなったというか.
これはこれで良いと思うのだけれども,なんとなく読後感が悪いように感じる.

個人的な印象だが,たぶん,舞台設定の問題なんだと思う.異物混入事件が発生したのに続けられるコンペって,今の時代には感覚的にありえない,と思ってしまった.安全とか,倫理とか.小説とはなかなかに難しいものだと思った.

今回もいろいろなコーヒーの知識が披露された.
ピーベリー」についてはこの本で初めて知った.
いろんなこだわりがあるんだね.

2019年6月23日日曜日

読書記録 珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る

岡崎琢磨著「珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る」を読んだ.
1が良かったので,続きで読んでみた.



今作ではバリスタの妹「切間美空」が登場し,彼女を中心に話は進む.今回の事件は,姉妹の幼い頃の秘密と関係していて,段々と登場人物の過去が明らかになっていった.

話としては,割と見通しがよく一本道に進んだように思う.推理する,というよりは顛末を見届ける,というような感じだった.

伏見稲荷,銀閣,金閣など,今回も京都の観光名所が登場した.
僕は伏見稲荷に行って稲荷山に登ってみたくなった. 
上まで行くのは,かなり汗をかくそうなので,秋の紅葉の時期に行くといいかもしれない.

次は,続きの事件簿3を読む.

2019年6月15日土曜日

読書記録 酒と家庭は読書の敵だ。

目黒考二著「酒と家庭は読書の敵だ。」を読んだ.



著者は,評論家の北上次郎であり,また,本の雑誌の元発行人でもある.

椎名誠の「本の雑誌血風録」や「あやしい探検隊」シリーズで,目黒氏はものすごい数の本を読んでいて,かつ野外に出ると釜炊きをしているイメージを持っていた.

印象に残ったのは次の箇所.
「本は読まなくても買わなくてもいい.見るのがいちばんである.」
「現実には本を買って読み,そのうえ原稿まで書いてしまうが,それはまだまだ私の修行が足りていないのである.」

もっと肩の力を抜いて本を読んでいいんだな,と思わされた.

2019年6月14日金曜日

読書記録 珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら,あなたの淹れた珈琲を

岡崎琢磨著「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら,あなたの淹れた珈琲を」を読んだ.本書は「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉として出版されたとのこと.屍人荘に続いて,またミステリーだ.



京都の喫茶店「タレーラン」が舞台で,主人公の「アオヤマ」と美人バリスタ「切間美星」の出会いから物語は始まる.表紙からも想像されるように,ミステリーと言っても密室殺人とかそんな重いものではない.

ライトノベル的に気楽に読めるし,謎解きもしっかりあるし,またコーヒーのうんちくは勉強になるし,京都の観光も楽しめるという一冊で何度も美味しい本である.

なお,タイトルのタレーランはコーヒーに一家言ある著名人.
タレーランはフランスの政治家・外交官で,美食家としても有名. 僕の好きなマンガの「大使閣下の料理人」にも「料理外交」を代表する人物としてしばしば登場する.なので,珈琲店バルザックの事件簿だったら,多分読んでなかったですね.

本書の冒頭では,タレーランの
「良いコーヒーとは,悪魔のように黒く,地獄のように熱く,天使のように純粋で,そして恋のように甘い」
という言葉が紹介されている.

ここで,甘いとはエスプレッソに入れた砂糖の甘味だそうだ.
本場イタリアでは,砂糖を入れるのは当たり前で,ブラックで飲むと変な目で見られるとか.

……ええ,私はブラックで飲んでいました.モグリですね.

本書の難点としては,ところどころに鼻につく表現があることだ.例えば「んぐぁ」とか.話が盛り上がっているところで多用されるので余計に気になった.勘弁してほしい.

NG表現をOK表現に変換するSeq2seqとかできないかな,とふと思いついた.

それはさておき,本書は文章がしっかりしていて読みやすく,通勤のお供にはもってこいの良書だった.読後感も良かった.続編が5巻まででているので,順次読んでいるところだ.

 

2019年6月9日日曜日

読書記録 屍人荘の殺人

今村昌弘著「屍人荘の殺人」を読んだ.鮎川哲也賞受賞作.オススメ.
 

ミステリー・サークルに所属する大学生である主人公が,演劇サークルの合宿に参加することになって,そこで殺人事件に遭遇する.

いわゆる密室殺人もので,密室の舞台装置がキャッチーだった.
確かにアレはゲームやテレビシリーズがウケてたし,ミステリに使っても良いと思う.本作でのアレは海外のと違って,日本風で描写がソフトだった.エンターテイメントとしてはこれくらいでいいと思う.

また,本作はプレゼンテーションが親切で,読者が迷わないように工夫されていてよかった.電車の中などあまり集中できない環境でもスラスラと読めた.

例えば,舞台となる山荘の構造がややトリッキーだが,見取り図を巻頭につけていてくれている.また,登場人物が増えてきて誰だっけ?となってきた頃に語呂合わせで登場人物が見分けられるように特徴を説明してくれたりしている.

今は,小説もスマホと時間を奪い合わないといけないので,読みやすくする,投げ出されないようにする工夫は求められているのだろうなぁと思う.

なお,ジャンプ+でマンガ版も連載されている.僕はこっちを先に読んで続きが気になったので原作を読んだ.


続編も出ているので,今度読む.

2018年8月6日月曜日

読書記録 数学ガール / フェルマーの最終定理

結城浩著,数学ガール フェルマーの最終定理を読んだ.



この本は,高校生の「ぼく」と数学仲間の女の子たちとの日常生活を通じてフェルマーの最終定理を解説している数学読み物.このシリーズは肩肘はらずに読めるので,とても楽しく読んでいる.

本作でも,あくまで読み物であって学術書ではないので,フェルマーの最終定理の詳細まで立ち入らない.

そのかわり,フェルマーの最終定理の面白さを理解するための数学的な概念を,よく考えられた例をもちいて説明してくれる.

例えば「三辺が自然数で面積が平方数である直角三角形は存在するか」という問題で無限降下法の説明をして,なるほどなぁと思っていたら,それがフェルマーの最終定理のn=4のときの証明につながった.

ピタゴラスイッチ感があり,とても楽しい.

また,最終章では,アンドリュー・ワイルズ教授が証明を試みた当時にたち返って「何がわかっていて,あと何を証明すればフェルマーの最終定理が解決するか」を入り口として,どんなことをして解決したのかを説明する.

こういう考え方って,数学に限らず問題解決においてとても重要だと思う.新しいネタを探すときにも,論文を読んで,どこまでわかっていて,どこから未検証なのかってまとめたりするし.

とても売れているシリーズだそうなので,改めていう必要もないかもしれないが,ぜひ中学生,高校生の方に読んで体験してもらい,数学が決して無味乾燥なものでないことを知ってほしい.

僕の高校時代にもあればなぁ,と思った.僕の場合は「ご冗談でしょう,ファインマンさん」が数理科学に血を通わせてくれた本だったように思う.この本はこの本でとても良い本だ.「皿回しから新定理」などのエピソードを読んで,定理を作った学者さんも当たり前だけど人間なんだなぁと理解したことを思い出す.





2017年9月4日月曜日

読書記録 ヤバい経済学


  • 相撲の力士は八百長なんてしない?
  • 銃とプール、危ないのはどっち?
といった、日常生活から裏社会までユニークな分析をしている。書いているのはアメリカの新進気鋭の経済学者のスティーヴン・D・レビット先生と、作家・ジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナー氏。本書は、今から10年前の2006年頃に話題になり、その後映画にもなっている(amazon prive videoで借りられます)。Wikipediaによるとレビット先生は現在50歳で、流石に歳月の流れを感じる。

 本書を読んだ感想は「こんな雑学みたいなテーマで一流誌に通すとはすごい」であった。ネットの記事とかコラムとかを読んでいると出くわしそうなネタで「ちょっと調べてみると面白そうだな」とは思うけど、でもデータを集めてきて、論文誌のレビューに耐えるだけの論を練り上げるのは、相当に大変だと思う。本当に。さすが、レビット先生、ノーベル賞よりも取るのが難しいといわれる「ジョン・ベイツ・クラーク・メダル」を獲得しただけある。

 日本人として身近な相撲についてもう少し詳しく見てみたいと思います。実際の論文は
"Winning Isn't Everything: Corruption in Sumo Wrestling." American Economic Review, 2002, 92(5), pp. 1594–605.

問題を知ってからこの論文が出るまで、最低でも下記の8ステップがある。かかる労力や難易度は様々だが、どこで躓いてもおかしくない。
  1. 新聞のコラムで相撲の八百長問題について知る
  2. 「優れた」分析観点を思いつく
  3. 相撲のデータを集めるため、英語の相撲専門誌「スモウ・ワールド」を15から20年分取り寄せる
  4. コンピュータにデータを入力する
  5. 分析を実行する
  6. 論文にまとめる
  7. 査読に耐える
  8. 論文が出版される
 地味にめんどくさいのが3と4のデータを集めるところなのだが、作業といえば作業なので淡々とこなせば、いつかは終わる。しかしながら、2の「優れた」分析観点を思いつくのステップは、不確かな状況のもとで自分の頭で考えることが求められ、精神的にタフでクリエイティブでなければできないステップだ。研究者の腕の見せ所である。

 今回の場合には、勝敗表から八百長が起こっているかどうかを判定する。当然のことながら、当事者の自己申告など無い。異常値検出みたいな問題設定ですね。さて、どうすればよいか。

 レビット先生は「勝ち越し」に着目し「7勝7敗で千秋楽を迎えた力士が、勝ち越しが決まっている相手と対戦する際に八百長が行われやすいのではないか」という仮説を立てた。7勝7敗の力士は負けてしまうと降格なのでどうしても勝ちたいが、相手は(優勝がかかっていなければ)負けてもそこまで痛くはない。
 実際にデータを分析してみたら同じ対戦相手でも、上記の状況では7勝7敗の力士の勝率が大幅に高くなっていた、とのこと。いやぁ、鮮やかだなと思う。
 僕なんかは最初はすごいアイデアだと思っても、分析をはじめたら泥沼にはまるというパタンばっかりなんだが。見習いたい。

 ヤバい経済学はシリーズ化されていて、2010年に超ヤバい経済学、2016年にヤバすぎる経済学が同じ著者から出ています。次に読んでみようと思う。



幻の黒船カレーを追え

水野仁輔著「幻の黒船カレーを追え」を読んだ 。「 銀座ナイルレストラン物語 」( 読書記録 )を読んで、同じ著者が出しているカレーの物語、ということで本書を読んでみた。  今回の感想はややネタバレ気味なので、新鮮な気持ちで読みたい方は、この先を読む前に、本を読んでほしい。  で...