2019年7月23日火曜日

読書記録 国立科学博物館のひみつ

成毛眞,折原守著「国立科学博物館のひみつ」を読んだ.
先月,上の子どもと特別展「大哺乳類展2」を見てきて,とても良かったので,科学博物館についてもっと知りたくなったため.



本書は,東京・上野にある国立科学博物館(科博)の日本館を掘り下げている.科博には,日本館と地球館の2つの建物があり,日本館は日本列島の自然と日本人について,地球館は地球全体の生命の歴史と人類全体について,というテーマで展示をしている.

本書は日本館側なので,日本列島を形作る岩石から,そのうえの土壌,植物,動物について見どころを教えてくれる.

意外と地元の岐阜県出てきて,驚いた.

幻の奇獣「デスモスチルス」の化石は岐阜県瑞浪市産とのこと.海棲哺乳類で本書ではアシカみたいな顔で描かれている.Wikipediaによるとカバのような姿をしているらしい.こんなものが歩いたり泳いだりしていたのか.

また,史上最大とも言われる二枚貝「シカマイア」の化石も岐阜の赤坂金生山で出たもの.大きいものは畳サイズになるとのこと.しかも,このシカマイアは金生山で,世界で初めて発見されたという.以外な巨大化石の宝庫だった.

なぜここで巨大化石が見つかるのかは未だ謎.

金生山は実家から(頑張ればなんとか)歩いていけるくらい近いので,リタイアしたら実家に戻って化石掘ってくらそうかな,などと夢が広がる.巨大化石の謎を解き明かすんだ!

しかし,その頃には金生山石灰工業に掘り尽くされて,山がなくなっていたりして.

展示室以外の施設の紹介もあって,レストランは実は上野精養軒が運営しているということが判明.この前は混んでいて諦めてしまったが,味は期待できそう.一回入ってみたい.

また,じつは,科博はつくばにも拠点がある.上野地区の展示数は約1万5000点であるのに対して,つくばの標本棟は430万点(本書の執筆時点.科博はコレクションを手放さない方針なので今はもっと増えているはず)と桁違いに多い.実は科博のコレクションの殆どはつくばにあるということになる.この本を読んで初めて知った.

普段は非公開なのだが,本書ではそこにも潜入している.
8階建ての施設を7階から下に降りながらコレクションを解説する.
上に軽いもの,下に重いものを置いている.例えば,一階には大型動物骨格・化石標本室と大型動物液浸標本室があり,ダイオウイカの標本水槽とかが置かれている.
年一で公開していて,その日なら中を見れるそうだ.

2019年は4月21日(日)だったようで,もう終わっていた.また来年.

一通りコレクションの紹介が終わったところで2001年の独立行政法人化以降の特別展のポスターがアーカイブされていた.

2005年の「縄文VS弥生」は見に行った.もうそんな前なのか
2010年の「大哺乳類展」は前回の哺乳類展だ.前回も行っていたら,9年間の進歩が見分けられたのだろうか.

というわけで,盛り沢山な科博であった.
本書を読んで見どころや展示の工夫,舞台裏での研究についての理解が深まったところで,また科博に行きたい.

なお,地球館の本もあるみたいなので,また今度読みたい.

2019年7月22日月曜日

読書記録 英語のこころ 日本語と英語のイメージギャップ

松本安弘,松本アイリン著 英語のこころ 日本語と英語のイメージギャップ を読んだ.

「トマト」と聞いて,どんなイメージを持ちますか?

真っ赤に熟した,みずみずしいトマト.考えるだけでうまそうだ.

リコピンの健康効果を思い浮かべる人もいるかもしれない.

しかし,英語圏では,「tomatoは食べずにおくと腐って悪臭を放つ姿を連想する」のだそうで,あまりいいイメージではない.

本書では,こうした身近なもののイメージ関して,東西での違いを38項目に渡って紹介している.



単語の持つイメージとはなかなか難しいもので,(普通の)ネイティブスピーカーに聞いても,明確な答えが得られるものではない.確かに「水仙」ってどんなイメージですか,と聞かれて的確に答えられる自信はない.

なので,本書ではシェークスピアやワーズワース,夏目漱石や川端康成などの文学作品に根拠をおきながら,言語学者へのアンケート調査も加えて執筆したそうだ.

特におもしろかったのは,Latin/漢語と,moon/月だった.

Latin/漢語

Latin/漢語は,英語に対するラテン語と,日本語(やまと言葉)に対する漢語の関係を対応させて類似点を議論している.

英語はもともとゲルマン系(アングロサクソン系)の言語であるが,1066年のノルマン人のイングランド征服(Norman Conquest)によって,ラテン系のフランス語が英語に流入し
たという.

すると,同じ意味でもアングロサクソン系とラテン系と2つの方法で表現されるようになった.
He got through the work in such a short time. (アングロサクソン系)
He completed the work in such a short time. (ラテン系)

上記の例だと,アングロサクソン系のget throughは格闘しながら仕事をやりきったという生き生きした感じがあるのに対して,ラテン系のcompleteは洗練され高級な感じがあるがやや冷たい感じを伴うという.

コンピュータ界隈にいると,completeってよく見るし,普通に英語だと思っていた.英語圏の人からすると外来語で,形式張った感じだったのかと.このあたりの感覚はまったくなかった.

また,学問の専門用語には,造語が容易であり,かつ高級に響くラテン系が好まれる,とある.ということは普段論文で読んでいる文章にはラテン系の表現が多いのだろうか.
日本語でも,格調の高い文にするために漢語を使うというのは,よくあるアプローチで,そのあたりの類似も興味深かった.

moon/月

日本における月のイメージは良い.

「日本人が月の光を浴びながら時の経つのも忘れて逍遥し,気が付けば夜を徹して月見をしていたという風流心」を持っているという.

漱石は,I love you.に月が綺麗ですねと訳を当てた,とのことだが,そうした風流心を前提にすれば,わかる気がする.

男女が二人,縁側に座って,時を忘れて静かに月を見上げている.

そんな情景が思い浮かべば,二人の関係は言葉に出さずとももはや明らかだ.
ただ,正直,家族で月見団子を食べたぐらいの月見の思い出しかない私には最早説明されないとわからない文化になってしまっていた.

ちなみに,欧米では月は一ヶ月の間に何度も姿を変える不気味なもの,というイメージらしい.月をみて狼男になったり,lunatic が狂人だったり,と.

そのほかgift/presentとかwhaleとか.

あとは,小売会社はgiftと言いたがり,一般人は普通はgiftと言わず,presentというとか.giftは高価な贈り物でやや冷たい感じがするのに対して,presentは,手頃な値段の贈り物であたたかく,柔らかいかんじがすると,と.

また,欧米人にとっての贈り物に対する感情の根底にはトロイの木馬の故事がある,という話も興味深い.

I fear the Greeks, even though they bring gifts.

という諺があって,Greek giftsはトロイの木馬のように油断ならないものという感情があるとのことだ.その他,パンドラの匣も,そういった油断ならないgiftだと.

上記は,故事だったけど,その他にも聖書由来のイメージも多かった.例えばクジラとか.旧約聖書にて,クジラは,神に5日目に創られた,とあるそうだ.そういう背景がわかれば,欧米諸国が反捕鯨に熱心に取り組むのもわかる気がする.

1993年発行の古い本ではあるが,根が聖書だったり古典だったりするので流行り廃りするような項目は少なく,今でも学ぶべきことは多い.言語を学ぶのは歴史や文化を学ぶこと,とは言われるが,よくまとまった良書である.

2019年7月15日月曜日

読書記録 稲盛和夫の実践アメーバ経営 全社員が自ら採算をつくる

稲盛和夫著「稲盛和夫の実践アメーバ経営 全社員が自ら採算をつくる」を読んだ.稲盛氏は,京セラ,KDDI(の前身のDDI),日本航空(JAL)の経営トップを歴任されてきた日本を代表する実業家.本書は,稲盛氏が培ってきたアメーバ経営をどのように実践するのかをJALなどの事例をもとに説明している.



その名も「アメーバ経営」という本もあるが,そちらはまだ読んでいない.そちらは2006年とやや時間が経っているのに対して,本書は2017年出版と新しく,また例が多くとっつきやすそうだったので,まずこちらから読むことにした.文字が大きく200ページと短いのですぐ読めたし,アメーバ経営の基本的な考え方も説明されていて,自己完結しているので,その判断は正解だったと思う.

財務会計と管理会計というふたつの会計システムがあって,アメーバ経営では主に後者に関する.粗くまとめると,会社を5人程度のアメーバという単位に分割し,それぞれのアメーバを独立採算制で運用する.外部とのお金のやり取りのある部署ばかりではないので,社内で取引するという考え方で採算を評価する.

上記のような方法により,下記のようなメリットがある

  • いつでも,会社のどの部分が問題があるのかを経理的に明らかにできる
  • 小さな単位で採算性を意識させ,社員ひとりひとりに経営感覚をもたせることができる
考え方はシンプルで,なるほどなぁと思うけれど,実際に運用するには社内取引に関する値付けなどに工夫が必要で,なかなか一筋縄ではいかなさそうだった.

製造業,通信業,輸送業などで稲盛氏が成功をおさめているという実績を考えると,アメーバ経営を適切に運用するための一段メタな部分である(経営)哲学の部分が重要なのではないかと思う.


次は今の仕事を改善するために何ができるのかを考えるべきなのだろう.OSS開発だと,社内に閉じないので社内取引とは?となるしね.

もし,ソフトをインストールと取引が発生したと考えるなら,使わないインセンティブが働いてしまいそう.新しいソフトを使うには,ただでさえ学習コストや乗り換えコストがかかるし.

今度は,ソフトウェア産業の経営に関する本を読んでみたいと思う.

2019年7月14日日曜日

読書記録 呼吸入門

齋藤孝著 呼吸入門 を読んだ.

本書では,日本には伝統の呼吸法があったと主張し,現代ではその伝統が断絶しかかっていると問題を提起する.そして,現代人が伝統の呼吸法を取り戻すエクササイズとして
3秒吸って,2秒とめ,15秒で吐くという齋藤式呼吸法を提案している.



この呼吸の特徴は,下記にあるように吐くことに重きを置いている.吐けば,吸える.
捨てればスペースができ,そこが自然と満ちてくる.その「他力」を信じる.(P. 60)
齋藤先生は,授業中に子どもを集中させるために,課題の前にこの呼吸をさせたりするそうだ.何日も続けていると,子どもたちはこの呼吸をすることで集中モードに入ることができるようになる,とのこと.スポーツ選手がするようなルーティンの一種のようになっているのかもしれない.

私は本書を読んで,姿勢とか呼吸に意識がいくようになった.

本を読む際にも,また,コーディングでの難解な局面でも,ふと姿勢が悪くなって,呼吸が浅くなていることに気づく.そんなときは,すっと骨盤を正して深く呼吸をしてみる.それで集中力が戻らないなら,力を使い切っている証拠であり,休憩したり他のタスクに切り替えたりする.

呼吸をきっかけに生産性が高まったように思う.

本書の話に戻る.齋藤孝先生の研究の出発点が呼吸と教育の関係性についてであったのは本書を読んで初めて知った.「息の人間学」が研究者向けであるのに対して,本書「呼吸入門」は一般向けの内容になっている.

ただし,よくあるHowTo本とは違って,呼吸と日本の身体文化,呼吸と武術,呼吸と能の関係などを論じて,呼吸の重要性を説明していて,なるほど深いなと思った.20年の研究成果に裏打ちされている.

一方で,「XX力」などのシリーズと同様に本書も非常に読みやすい.こういうリズムのある説明も,整った呼吸から生み出されているのかもしれない.

2019年7月12日金曜日

読書記録 不動産を買うなら五輪の後にしなさい 不動産鑑定士がこっそり教える売買のコツ

萩原 岳著「不動産を買うなら五輪の後にしなさい 不動産鑑定士がこっそり教える売買のコツ」も読んだ.



著者は不動産鑑定士で,相続の際の土地の税金を計算したりするような仕事をしている.売買したり,仲介したりする人ではないので,そのへんがフェアな視点から書かれているように思った.

例えば,新築と中古の売買価格の決まり方の違いを丁寧に説明していたり,利回りとリスクプレミアムの考え方を説明していたりなどだ.新築を買うのはよっぽどお金に余裕がないとつらいな,と思ってしまった.買う予定は全くないけれども.

また,なぜ都心のタワマン人気なのかこの本を読んでようやく気持ちを理解した.価格に占める上モノ:土地の割合とか,人口減社会でも地価が下がらなさそうな場所を選んで建てられているとか.利便性の高い場所は限られていて,そこに高い構造物を建てて皆でシェアするのは合理的,ということなのだろう.

この本で解説されている値付けのからくりがわからないと,物件が割安か割高かは判断できないと思った.相場観とはいうものの,基準がないと踊らされてしまう.タイトルにあるように五輪もそうだし,過去にはバブルとか.

次に引っ越すときにはもう一回読み返したい.

編集元のツイート:
4月に読んだ本みたいだけど,メモしてあると内容を思い出すものですね.

2019年7月11日木曜日

読書記録 珈琲店タレーランの事件簿5 この鴛鴦茶がおいしくなりますように

岡崎琢磨著 珈琲店タレーランの事件簿5 この鴛鴦茶がおいしくなりますように を読んだ.シリーズ最後の1冊だ(2019年7月現在).



本作では,「アオヤマ」の中学生時代の恩人である年上の女性「眞子」が登場する.彼女は,アオヤマがコーヒーを追求するきっかけを作った人でもある.そんな彼女との11年ぶりの再開から物語が始まる.

今回の京都要素は源氏物語で,宇治などゆかりの場所が登場する.古典に登場する「京」と京都は,頭の中で全然つながっていなかったのだが,そう言われてみれば確かに源氏物語は京都が舞台だった.

源氏物語だけあって,ややドロドロした話が多めながらも,最終的にアオヤマとバリスタの関係に進展が見られてよかったように思う.その後の話も読みたいなと思うけど,源氏物語の「夢浮橋」のようにこのままの終わりでよかったように思う.

今回のコーヒー豆知識は世界各国のコーヒーだった.タイトルにある鴛鴦茶(えんおうちゃ)もその一つ.コーヒーと紅茶を混ぜた飲み物で,香港でよく飲まれているものだそうだ.

鴛鴦茶(えんおうちゃ)はコーヒーと紅茶を混ぜた飲み物

コメダ珈琲にも期間限定で「ジェリコ 鴛鴦茶」なるものがあるそうなので飲んでみたい.もはや別物のような気もするが.

タレーランの事件簿シリーズ


2019年7月10日水曜日

読書記録 その英語仕事の相手はカチンときます

デイビッド・セイン著「その英語仕事の相手はカチンときます」を読んだ.本書では,職場でありそうなシチュエーションごとに「カチン」とくる言い方と,正しい言い方が提示される.見開きで1シチュエーションなので,サクサク読める.



最初の例は
「週末どうだった?」という質問に対する
"Fine."
という回答。これは愛想のない答えで、まぁまぁという度合いが強い.

おすすめは
"pretty good."だそうだ.
ネイティブがよく使うと.

いいな,と思ったのは,正しい言い方が複数あること.丁寧さの違いや、自信の有無などをグラデーションで示してくれる.これを見ていると,英語にも謙遜とか敬語ってあるよな,と思う.

こういう例が100個ぐらい載っている.感覚な部分も多いので,暗記(!)しないとしょうがない部分も多い.が,「英語を暗記しないでモノにする方法」を意識しながら,例を眺めていると,仮定法で柔らかくする,断定を避けること(I think ..., I'm afraid ...とか)で柔らかくするなどのルールがあるよなと思った.


これを読んで,コードのレビューのときなどに
「失礼じゃないかな?強く言い過ぎてないかな?」
と意識するようになった.あとは復習ですね.

幻の黒船カレーを追え

水野仁輔著「幻の黒船カレーを追え」を読んだ 。「 銀座ナイルレストラン物語 」( 読書記録 )を読んで、同じ著者が出しているカレーの物語、ということで本書を読んでみた。  今回の感想はややネタバレ気味なので、新鮮な気持ちで読みたい方は、この先を読む前に、本を読んでほしい。  で...