竹内氏はプロの登山家で,8000m峰のすべてを日本人として初めて完全登頂したことで知られている.下記のように先月にその13,14番目の登頂記録を読んでいて,今回はより広い視点からのエッセーを見つけたので読んでみた.
表紙の写真は2012年のアイランドピーク登山のときのもの.背景の雪山は切り立った壁のようで,すごいとこ登っているんだなぁということが直感的にわかる.また,竹内氏は右のフレーム外の方を仰ぎ見ていて,そちらには何があるのだろうと想像力をかき立てられる.塩野米松著「登頂 竹内洋岳」もGW中に読んだ.世界に14座ある8000m峰を完全登頂した竹内氏の13,14番目の登頂の記録.ブログとインタビューで構成されている.ブログでは淡々と書かれているんだけど,インタビューを見るとその裏で壮絶なチャレンジしてて背筋が凍った.https://t.co/aW3USb0fce— Toshihiko YANASE (@toshihikoyanase) May 12, 2019
本書の内容は,竹内氏が山で考えたり,感じたことをまとめたもの.その山というのが8000m峰など大多数のひとは行ったことがないところなので,その言葉も普通は聞けないものであると思う.
形式としては,見開きで一つのエピソードになっていて,左ページが見出し,右ページがその説明になっている.この見出しが,心に響くものであり,考えさせられるものになっている.見出し力だ.
エピソードは,基本登山のことが書いてあるのだが,それは我々の日常生活や仕事にも応用できる.
例えば意思決定に関するエピソードとして
「誰かから決め方を教わるのではなく,自分で決めることを学ぶ」
というものがある.
竹内氏は,その登山人生の中で,学生時代の先輩,体のケアを相談する医師,天気のアドバイスを貰う山岳気象予報士など様々な人に支えられてきた.彼らを尊重し,信頼を置く竹内氏であるが,彼らの言葉を受け入れるか,受け入れないか,最終的に決めるのは自分だという.それは,彼らの言葉に従った結果は彼らの結果になるのではなく,自分の結果になるからである.
登山では一回の決断ミスで命を落とす危険がある.そんな修羅場を幾度となくくぐってきた竹内氏の言葉だから重みがある.
事実,2007年にはガッシャブルムⅡ峰で雪崩に巻き込まれ,背骨を粉砕骨折する大怪我を負っている. 不運だったと言ってしまいそうになるが,竹内氏は運という漠然とした言葉で片付けることを否定し,考える姿勢を失っては行けないと強く主張する.それが,決断を学ぶということなのだろう.
私も,仕事において,また日常生活において,あるものは意識下で,またあるものは無意識下でいろいろな決断を下している.
それぞれの決断がどういう結果をもたらすのかを振り返りつつ「決めること」を学んでいかなければ,と思った.
その他にも下記のように経験に裏打ちされた心に残るエピソードがたくさんある.
- 仕事でも趣味でもない「生業」を営む
- 必要な努力を探し出す
- 何もすることがない時間なんて本来無い
これらは,広くプロフェッショナルとして仕事をしようとしている人に共通している態度なのではないか,と思う.
登山に興味ある人はもちろんだが,特に興味のない人でも,何かを突き詰めたいと思っているならオススメできる本である.
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